何年か前の頼まれもの。古い箪笥についていた小さな取っ手を復元しました。二つ足りないということで、残っているものを見本にお借りして、形や質感を似せながらいちから作っていきました(左)。この復元の難しいところ、厚みが0.2mmほどのとても薄い板をプレスして作ってあることでした。彫金の打ち出しでもないこの抜け具合を再現するのは本当に難しいことです。微細なたわみ、ゆがみ、張りだと思います。型をつくる訳にもいかず、予算や時間的なこともあって、厚い板を切り抜いて縁を丸くやすってつくりました。職人の丁寧な仕事ながらも一歩引いて余熱を取ったような生産だからこその塩梅。それでも日々の生産の中に、表現やぬくもりが消えているわけではないのです。